3. 日本海時代の実現に向けた連携施策

 こうした施策の実現に向けては、国と地方の役割分担の明確化、PFIの活用等による官民の適切な役割分担、市民参加の促進等、様々な主体の参加と連携が必要です。これらの取組みに加え、今後、日本海を通じた国際経済・文化交流が飛躍的に進展し、かつ、持続的に行われていくためには、日本海側の各地域、さらには対岸の地域が協調し、連携して取り組むことが必要です。地域の連携や協力により効果を発揮すると考えられる施策として以下のものが挙げられます。

1.対岸地域との交流の促進

 日本海地域にとっては、地理的な条件から、対岸の北東アジア地域との交流を図ることは重要です。これら地域との交流の拡大を促進するため、対岸地域と日本海地域との情報交換のための会議等を実施していきます。また、対岸地域の発展による新たな貨物の増加等によるフェリー航路の形成等の可能性についても検討します。さらに、対岸諸国の基盤整備等の支援について、国際協力の枠組みの活用を含め検討していきます。

2.日本海側の各地域のネットワーク形成に向けた取組み

 日本海国土軸の形成にも資するよう、日本海側の地方自治体同士の港や地域に関する情報交換の場の設定や、北前船の文化を活かした各地の資料館の連携や航海体験等のイベントの開催などにより、日本海沿岸地域全体の地域連携意識の醸成を促進します。また、日本海側の地域全体の様々なデータや情報を定期的に収集し、集積させるとともに、これを分析して公表します。さらに、これらの活動をより効果的なものにするよう、日本海側を所管する複数の国の関係部局が定期的な会合を設け、企画の立案、実施、フォローアップなどを行います。

 従来、必ずしも十分と言えませんが、運輸省港湾建設局等がこうした役割の一部を担い、第一港湾建設局がとりまとめを行ってきました。今後、新たに発足する国土交通省地方整備局等においても、上記業務が発展的に引き継がれ、各整備局、及び地方自治体、その他の団体の取り組みを北陸地方整備局港湾空港部が取りまとめの任に当たることが期待されます。

3.航路誘致のための連携したポートセールスの促進

 日本海側の輸出入コンテナの取扱量は近年急激に伸びているものの、個々の港湾での取扱の絶対量が少なく、定期的な航路の就航に至らない場合もあります。定期航路が就航すれば、港湾の利便性が向上し、貨物が増加してさらに定期航路が充実するといった好循環が発生することが考えられます。そのため、各地域で連携して物流拠点としての魅力をPRする場を設けるなど、各地域が協調的な取り組みを行えるような環境を整備するよう努めます。

4.日本海の海洋環境保全のための連携した取組み

 今後、日本海に国際物流の大動脈が形成されれば、それに応じて海洋環境の保全も非常に重要な課題となってきます。日本海は大陸や島々に囲まれた内海的な形状をしており、一旦環境が汚染されると取り返しのつかない被害が生じるおそれがあります。

 このため、問題が顕在化してから対応するといった対処療法的な方策ではなく、定期的に水質や潮流等、日本海の海洋環境に係るデータを収集、分析し、日本海の保全のための措置を提言するなどの取り組みが必要です。日本海側の関係部局がこうした取り組みを連携して行うことが期待されます。とりわけ、地方整備局が連携して調査に当たり、データーを長年にわたり蓄積することが期待されます。さらに、対岸を含め、日本海を利用する諸国とも共同調査を実施するなど、日本海の国際的な保全・管理を行っていく必要があります。