目標2:臨海部の形成

市民が集い、時を過ごす、地域づくりの核ともなる臨海部の形成

1.日本海地域の臨海部の特徴と課題

 日本海地域の港の多くは河口部や自然湾を利用して発達し、港の周りに市街地が形成され、人々が生活を営んできました。そのため、港のあるまちや地域は、港とともに発展し、港は臨海部の地域づくりの重要な要素になっています。   また、港を中心とする臨海部には、戦後の我が国の経済成長に伴い、様々な工業やエネルギー供給施設が立地してきました。特に高度成長期には臨海工業地帯の整備により、掘込み式の港湾が新たに建設され、その周りに工場等が立地してきました。こうした産業は、地域経済を支えるばかりでなく、エネルギー供給等を通して太平洋側の発展を支えてきました。

 このように、日本海地域の港は、その多くが大河川の河口部や自然湾に形成され、それが順次拡大し、隣接地に、掘込み港湾もしくは埋め立てによって新港を形成しています。物流、産業は新港地域に順次移動していき、河口部の旧港は、施設が陳腐化、老朽化しているところが多く見られます。この旧港周辺は、古くから市街地が形成され、日本海地域の文化を残しているところも少なくありません。旧港の陳腐化は、こうした都市の機能、魅力を大きく損ねています。

2.日本海地域の臨海部のポテンシャル

 当地域の将来を考えるにあたっては、まずは、日本海の「海」の特性に着目する必要があります。日本海は、春から秋にかけては波が穏やかであり、太平洋側に比べ水質のよい多くの海水浴場が存在するなど、良好な環境を有しています。また、日本海に沈む夕日は観光資源ともなっています。ゆとりや癒しを求めるニーズや海洋レジャーの高まりの中で、日本海は地域の人々により一層の憩いや快適性を提供する可能性を秘めています。冬季は逆に風浪が厳しくなりますが、地域の個性が求められる時代にあっては、冬の厳しい荒波も地域・観光資源として見直される可能性もあります。

 また、日本海地域の臨海部には、かつては北前船で賑わい、その交流を通じて沿岸各地の文化がお互いに影響を及ぼし合うなど、港を中心に展開してきた港町の文化が残っています。さらに、国際航空ネットワークの充実により、海外から多くの人々が訪れるとともに、地域住民やより広範囲な地域の人々が当地域から直接、海外に手軽に訪れることが可能となります。港は海を通じて世界に開かれた場所であり、こうした国際文化の交流が営まれる場としてもふさわしい空間です。こうしたことから、当地域において、港を中心とした臨海部は、豊かな自然を享受しつつ、国際的な賑わいを有し、地域住民に都市的な快適さを提供する空間として発展するポテンシャルがますます高まっています。

3.ポテンシャル活用のための主要施策

 こうした日本海地域の持つポテンシャルを活かし、港を中心とする臨海部を、市民が集い、それぞれの時間を過ごせるような、より魅力的な空間として、創造・再生を図ります。
 そのため、新たな産業の導入が低未利用地等において円滑に進む観点も含め、新港に物流や工業に係る機能を、旧港地区に生活や都市に係る機能を、それぞれ集約することを基本としつつ、抜本的な土地利用の再編を図ります。そうした取り組みと併せて、河口部等の旧港地区を伝統的な佇まいを活かしつつ、より魅力的な空間を創造・再生したり、市民のための美しい海岸の再生などを図ります。

 その際、旧港地区の背後の都市づくりや、より広域的な地域づくりとの十分な連携が重要です。また、高齢者を含め誰もが利用しやすい空間となるよう、ユニバーサルデザインを目指しつつ、計画策定や維持管理に市民やボランティアが継続的に参加することや、そのための仕組みづくりが重要です。

(1)港を中心としたまちや地域の基盤づくり

河口部等における旧港地区を、その伝統的な佇まいを活かしつつ、市民が、港や海を楽しむ場、都市の発展の場として、創造・再生します。そのため、旧港地区に残っている物流、産業機能をできるだけ新港に移転させつつ、旧港地区において街路を建設するなど再開発を推進します。そうした取組みと併せ、市民が港や海へアクセスしたり、河川で隔てられた地区間を移動したりするための交通機能を充実させたり、市民が港や海を楽しむ施設の立地や、背後の中心市街地の活性化とも連携した商業機能の導入を促進します。また、遊休化した倉庫等の既存施設の積極的利用を図ります。     こうした取り組みの一環として、金沢地区において、県庁の移転に伴う都市づくりと連携しつつ、国際的な商取引の機能の導入も含め、既存の埠頭用地の抜本的な再開発を構想します。また、新潟地区において港を中心として様々な施設を結ぶ新たな交通体系の導入を構想します。

(2)日本海の自然特性を活かした親水・レクリエーション機能の充実

  穏やかで静かな夏の日本海と、荒れた冬の日本海といった異なる特性を活かしながら、市民や多くの観光客が時を過ごせる、親水・レクリエーション施設の導入を図ります。

    1. 春から秋にかけての穏やかな日本海の魅力をさらに活かすよう、プレジャーボートを適切に管理しつつ、マリーナやボートパーク、プロムナードの整備をより一層図ります。また、穏やかで、優れた自然景観を有する日本海は客船の航行に最適であるというポテンシャルを活かし、旅客船ターミナルの整備を図るとともに、各種イベントと組み合わせるなどにより、日本海での客船クルーズがもっと活発化するよう努めます。
    2. 冬の日本海を地域・観光資源として活かせるよう、日本海特有の冬の荒れた激しい風浪がよく見え、かつ集客が見込まれる場所において、緑地、レストランなどを備えた全天候型の施設の立地等を推進します。荒れた冬の海を見ながら食事を楽しむなど、新たな日本海地域の魅力を、民間の創意工夫を活かしつつ、発掘します。

    (3)日本海の歴史・文化を活かした交流機能の充実

    当地域の歴史・文化を活かし、国内外から多くの人々を引きつけ、また、市民の 教育や伝統文化の継承の場ともなる、魅力ある交流機能を充実します。

      1. 日本海の港は北前船の歴史など地域の伝統文化の宝庫でありながら、現在の港には、こうした歴史、伝統を後世に伝える場所が少ないのが実態です。そのため、港の歴史、港湾活動等に関する市民の教育・伝承の場や、地域文化の情報発信・創造の場を、各種公的施設を活用し、また様々な団体と連携して形成します。さらに、各港湾(空港)工事事務所をこうした機能を提供できる場として活用するよう検討します。
      2. 国際化時代のまちづくりの拠点にふさわしい施設の導入を図るとともに、NGO/NPOや在留外国人など様々な人々が集える場を整備します。

      こうした取り組みの一環として、伏木富山地区や敦賀地区において日本海地域の文化や歴史を伝える博物館・資料館等の整備を構想します。

      (4)美しい港湾景観の形成

      日本海の港は、景観、色彩に十分配慮したものになっているとは言い難い状況です。地域住民がみなとに愛着を持つとともに、多くの人々が訪れるよう、景観、色彩に配慮した港をつくります。この際、地域に馴染んだ色彩、景観となるよう配慮する必要があります。

      1. 「日本海の港を美しく」を合言葉に、各港で自らの港の景観、色彩をチェックし、評価するキャンペーンを展開します。その上で、市民グループをはじめとする、民間諸団体と意見交換を行いつつ、景観改善計画を策定します。さらに、改善計画に基づいてアクションプログラムを作成し、各方面に景観改善への協力を 働きかけます。
      2. 人の視点に立った景観形成や、船や海、夕日、山岳などの地域資源がよく見える場所に憩いの空間を設けるなどの取り組みをします。また、遠くからでも認識 できるような地域の景観にマッチしたランドマークの整備を進めます。

       こうした取り組みの一環として、敦賀地区において港を一望できる空間の整備と美しい港湾景観の形成を構想します。また、酒田地区において夕日と鳥海山を一望できる空間の総合的な整備を構想します。

      (5)市民のための海岸の再生・創造

      当地域では冬季の激しい海岸侵食等のため、かつての美しい白浜が失われた状態になっています。このため、海洋レジャーの高まりや市民の海辺に対するニーズも踏まえ、侵食対策と併せ、美しい白浜を再生させる取り組みを行います。この際、消波ブロックによる防護から、水面下の構造物(潜堤)、砂浜等による面的な防護への全面的な転換を図り、できるだけ海面を活かした空間を創造します。