目標3:安全や安心の確保
目標3:人々の生活を支える安全や安心の確保
1.安全で安心な社会への要請
地震等の自然災害や厳しい自然条件への対応、長期的に影響を及ぼす環境問題への対応、地域社会への配慮により、安全で安心な地域づくりが求められています。
我が国には地理的条件から地震、津波、台風、水害など自然災害が多発します。1995年の阪神・淡路大震災においては、港湾施設を含め、従来の予測を越える甚大な被害が発生し、地域社会のみならず我が国の経済・社会に大きな影響を及ぼしました。
また、環境問題への認識が高まる中、港や海岸等の環境保全への積極的な対応が求められています。また、海洋汚染の防止や廃棄物の受け入れなど、より広域的な環境保全に貢献することが必要です。
さらに、港や空港は日常的に生産、生活物資を供給し、水産業や観光により地域活性化をもたらすものであり、こうした機能は特に離島にとっては重要です。
2.地域の現状と課題
日本海地域においては、1964年の新潟地震や1983年の日本海中部地震等大地震が発生し、地域社会に甚大な被害をもたらしました。また、1963年には、豪雪が発生し、地域社会が孤立したこともあります。こうした災害時には、港は地域に生活物資を供給する緊急ライフラインとしての役割を担うため、今後とも、災害に強い港湾を整備する必要があります。また、当地域は、日本海中部地震のように、大規模な地震の発生時には極めて短時間のうちに津波が来襲する可能性があり、津波対策も緊急かつ重大な課題です。さらに、海岸侵食が激しい地域も多く、海浜や背後の地域社会を守っていく必要があります。
また、日本海沿岸は、水質のよい多くの海水浴場を有するなど、太平洋側に比べ良好な環境を保っており、こうした恵み豊かな環境を貴重な財産として将来世代へ継承することが求められています。また一方で、日本海はナホトカ号の油流出事故の経験などからも分かる通り、常に汚染の危険にさらされています。こうした危険性は、アジアとの貿易の拡大による日本海の利用の増加により、さらに増大します。 離島にとっては、港や空港は、日常生活に必要な物資を供給するものであり、かつ観光客の到来により地域を活性化させる役目も果たしています。
3.課題に対応した主要施策
日本海地域が抱える課題に対処して、自然災害や環境問題への対応、地域社会への配慮により、安全で安心な地域づくりを行います。
(1)地震、津波、海岸侵食等の自然災害への対応
自然災害に対する事前の防災対策や災害発生時における緊急対応を図るため、以 下の施策を講じます。
- 地震、豪雪等の災害時における救援物資等の受入窓口や、地域住民の避難場所や災害復興拠点としての港の機能を確保するため、岸壁の耐震性の強化や緑地の整備を図ります。 さらに、首都圏を始めとする太平洋側の地域が大規模災害を受けた場合に、それらの地域の港湾機能の一部を代替して物資輸送を行うネットワークの確保について検討します。
- 台風等の緊急時における船舶の避難を容易にするため、避難港等を整備するとともに、そのネットワークの形成を図ります。
- 日本海特有の激しい海岸侵食による高潮の発生や、地震に伴う津波の発生による被害の危険性に対し、沿岸部の地域社会の安全を確保するため、面的防護等による海岸保全施設を整備します。
(2)良好な港湾・海岸環境の将来世代への継承
日本海側の港湾や海岸における良好な環境を保全するための措置を講じます。
- 野生生物が生息している水域や砂浜等、港湾やその近辺における貴重な自然環境を保全するために適切な措置を講じます。
- 藻場等の発生を促進する緩傾斜型の護岸などの施設や、海水交換型など自然浄化機能を有する施設を導入するとともに、汚泥浚渫等により湾内の水質浄化に努めます。
こうした取り組みの一環として、例えば、伏木富山地区において運河の水底質の浄化、金沢地区において河北潟の水質浄化、七尾地区において湾内の水質浄化に取り組みます。
(3)海洋の環境保全への貢献
日本海の利用の増大にも対応しつつ、日本海の環境保全に積極的に貢献します。そのため、ナホトカ号の油流出事故等に鑑み、油回収可能な船舶を配備するとともに、事故発生時に機動的に対応するためのネットワーク体制を整備します。さらに、油流出の初期対応の迅速化や長期的な汚染や汚濁を防ぐ観点から、海洋水質のモニタリング体制の整備について検討します。
(4)廃棄物処理場の計画的な確保
資源の循環化やゴミの減量化への取組みを行いつつも、最終廃棄物は依然として発生し、それを適切に処理することは引き続き重要な課題です。臨海部、とりわけ、埋め立てた跡地の利用が可能な港湾で廃棄物を処理することは、山間部の自然環境の保全等に資する面があります。処分用地の逼迫している地域の状況も踏まえ、港湾での廃棄物処分場の計画を関係者間で取りまとめ、計画的に整備を進めていくことにより、広域的な地域の環境問題に貢献します。
(5)地域の日常生活を支える港湾づくり
離島の生活や地域経済を支えるため、離島航路の安定的な就航を確保するとともに、利便性の一層の向上を図ります。